Hack For Japan 塩竈市浦戸諸島視察レポート

スタッフの鎌田です。

2011年7月3日、前週のスタッフ関さんに引き続き、Hack For Japanメンバーでもあり仙台在住の小泉さん(@koi_zoom1)のコーディネートで、Hack For Japanメンバーと前日に行われたデブサミ東北の関係者で、津波被害の大きかった浦戸諸島の視察に行ってきました。Hack For Japanは震災直後から活動しておりますが、いつも課題として挙るのは被災地以外の地域から参加する開発者が被災地の様子、状況を知る術が限られている所にあります。今回の視察も前回の関さんによる取材に加え、被災地の状況を伝えることでアイデアソン、ハッカソンに参加する開発者の着想に繋げられればという思いと、ITの力を使って復興を促進させるための視座を手に入れるという目的を持って行ってまいりました。
今回は浦戸諸島の中から、寒風沢(さぶさわ)島と桂島を回ってきました。小泉さんと一緒に浦戸諸島ご出身の土見大介さんに案内していただき、被災された方々のお話を聞く貴重な機会をいただき、ありがとうございました。

津波被害に見る塩竈と浦戸諸島の関係

小学校で習うのでご存知の方も多いと思いますが、一般的に湾口が広く本土に近づくにつれて狭くなる構造の海岸を「リアス式海岸」と呼び、本土に近づくほど津波被害が大きくなりますが、塩竈と浦戸諸島はその逆に湾口が浦戸諸島により覆われ狭く、本土に近づくにつれ湾が大きくなる構造から、浦戸諸島は防波堤のような形で津波被害を受けてしまった影響で、その被害状況は非常に大きなものとなっています。それに対して塩竈のほうは他の地域と比較すると津波被害が少なかったようです。とはいえ、写真のような形で随所に津波の傷跡が残っています。このように東日本大震災の被災の状況は土地によって全く異なり、十把一絡げな対応が難しいところがあります。

塩竈から浦戸諸島への航路

塩竈から浦戸諸島にかけてはマリンゲート塩釜より市営の汽船が運行されています。マリンゲート塩釜も津波による被害の痕が見て取れますが、地元の人々に寄る復興バザーなどが催されており、復興への息吹が感じられました。マリンゲート塩釜より乗船すると、その航路の中ではカモメが船に寄り添う形で追いかけて来ます。乗客はその追いかけてくるカモメに餌を与えることなどができ、地元の観光局も紹介しないような穴場とのことです(小泉さん情報)。そして、より小さい船に乗り継いで行き寒風沢島に入ります。このことからも震災当時、浦戸諸島が孤立してしまう状況は想像に難くありません。

寒風沢の被災状況

傷跡も生々しい寒風沢島の漁港に到着すると、副区長の島津功さんに出迎えていただきました。一般的には町長さんの立場にある方を浦戸諸島では区長と呼ばれ、島民の方を束ねて各所と調整されています。寒風沢島は高齢化も進んでおり、震災直後の3月の寒さや介護問題が大変だったとのお話でした。そうした若者が非常に少ない環境でもあり、インターネットを活用した情報配信活動はおろか情報収集も非常に困難な状況ということをお話を伺って痛感しました。また、普通の携帯電話もキャリアによっては回線が安定しないのと、メールでのスムーズなコミュニケーションに関しても難しいという状況です。寒風沢島内の小学校が避難所として使われており、そこに併設する形で仮設住宅が設置されています。先日伺った時には避難所に14人程度の方がいらっしゃいました。震災後は最大200人ほどの人達がこの避難所に避難されていて、ライフラインは5月まで復旧されず、それまでの間は皆さんはテントでの共同生活が続いたそうです。水道管は本土から海を渡って引かれており、それが津波によって破壊されました。そして今も下水処理などに関しては復旧の見込みが立っていないようですが、バイオ処理のトイレなどの導入によってある程度の改善が見られているとのことでした。色々な所で言われていることですが、ライフラインとしてのプライオリティは水道、電気、ガス、電話などの復旧は比較的はやく進みますが、インターネットの回線の復旧などは遅く、さらにそれが島である場合はより遅れる傾向が分かります。我々の活動を直接このような場所で展開するためには、インフラ面の整備は必須でありますが、それらが困難である現状では別のアプローチでこうした土地の被災された方々への対応を検討する必要がありそうです。

島津さんのお話によると、寒風沢は農業と漁業の兼業が主体の島であるところが、津波による防波堤の破壊により潮の満ち引きに対応することができず、海の水がそのまま田畑に流れ込む塩害により農業の実施がほぼ不可能になっており、かつ、第一種漁港(※地元の漁船を対象とした漁港)のために国から当てられる予算が少なく、着工から40年かけてようやく開港した漁港が今回の津波により使えないほどに破壊されてしまった状況でもあるため、国に対して支援を要請しているそうですが、様々な要因により未だに修復の目処がたたないとのことでした。被災された地域に残って生活することを望む人々に対して、ITの力でどういう支援ができるのか、考える必要があるように思います。

桂島の被災状況

寒風沢島の次に小舟で桂島へ入り、島の説明を土見さんにしていただきました。桂島は島の形状で人の通る道を中心に「凹」の構造であったために、両脇にぶつかる津波が通りに入ってきて、その部分の引き潮などの被害が大きかったようです。また、津波の被害を正面から受ける形になった砂浜側はコンテナが漂着しており、また、今も震災直後のような様子を保っているかのように流れ着いた家屋の瓦礫が今も全くの手付かずという状態でした。これは島という地理的構造上、港からの重機の搬入がままならないのと、瓦礫の搬出も同様の理由で困難な状況にあるからです。こうした物理的に復旧作業が困難な場合、ITの力は後方支援的に物理的な復旧活動を効率化する方向に向けたほうが結果として被災地の復旧を早めるかたちになる感触を持ちました。

一通り桂島を回ったあとに、桂島の高台で浜辺が一望できるペンション鬼ヶ浜を営む鈴木芳明、美智子ご夫妻から、ご飯を出していただきつつ震災当時のお話を伺うことが出来ました。地震が起きてから、津波が到達するまでお二人の感触では1時間半から2時間くらいあったとのことで、一望できる浜辺の水が全て引いてしまってから、津波を遠目に目視できた直後はあっという間に津波が迫ってきたのだそうです。ここでもやはり津波によるライフラインの破壊が著しく、電気と共に本土から水道管で引いていた水も津波による影響で水道管が破壊され不通になったとのことでした。

浦戸諸島視察の最後はHack for Japanメンバーの小泉さんの実弟でもあり、浦戸諸島で漁業も営んでいる小泉善雅さん(写真奥が小泉善雅さん、写真手前が小泉(@koi_zoom1)さん)から、活動されている「うらと海の子再生プロジェクト」のお話を伺うことが出来ました。こちらのプロジェクトは、インターネットを使って全国から浦戸で獲れる牡蠣や海苔などの一口オーナーを募り、そのオーナー料を被災の影響で破壊されたものの修繕にあてつつ、漁業の再興を目指した活動となっています。なお、浦戸四島の被害総額は約10億円にものぼり、国からの保証はその内の2/3程度。高齢化も激しい土地であるため漁業を辞める人が多く、再開に手を上げる人々は少なかったが、桂島の若手を中心に再建活動が始まったようです。なお、全国から寄せられた金額は1億7千万も超えていて、今後の継続展開を考える上で、その使途の透明化を直近の課題としているとのことでした。7月に社団法人化して組織体制を強化し課題解決に取り組んでいくとのことです。浦戸諸島のこのプロジェクトをモデルケースとして、他被災地の漁業関係者にも展開していく展望をお持ちでした。こうしたITを活用した事例はテンプレート化できる好例のように思います。ひとつの成功事例をモデルケースとし、インターネットによる購買サイトなどの提供などは漁業に限らず、他の分野でも応用ができる話でもあるので、CMSの提供やその運営を手伝うことでも十分に復興支援になり得る実感を持ちました。

今回の視察では浦戸諸島という構造上の理由から、比較的に震災直後の状況に近い状態が保たれてしまっている点で、現在の復興フェーズの視点に加えて、復旧フェーズにおいて何が必要であるかを改めて考える契機にもなりました。インターネットが重要なインフラとして認知されていくよう、IT業界全体としても努力していく必要があります。

7月23日アイデアソン、30日ハッカソン (仙台・会津若松・遠野・東京)

もうすでに告知されておりますが、7月23日、30日(仙台・合図若松・東京・遠野(遠野は23、24日))にてアイデアソン、ハッカソンを実施いたします。また、先だってスタッフ関さんより案内がありましたとおり、遠野まごころネットさんのご協力を得て、7月23日、24日の二日間でアイデアソン、ハッカソンを実施いたします。遠野では初開催となります。

なお、7月23日のアイデアソンでは各4会場をUSTでつないだ形で各地からの情報をシェアする形になります。ご参加できない場合でも、ぜひUSTをご覧になってください。USTの案内はHack for Japan公式Twitterアカウント(@hack4jp)よりお知らせいたします。また、お知り合いにもご参加いただけるよう、ぜひともご紹介ください。

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